はじめに無があった。ひょんな拍子で均衡が傾いて、ほとんど爆発と言っていいような突然の膨張が起こった。誰かが「光あれ」と宣言したかどうかは知らないが、その膨張、比喩で言うところの、はじまりの爆風はまだ吹き荒んでいる。
 その夜風に乗って生きている。


 進学を言い訳に上京してきた街で、俺は目と耳を澄ませて毎日を歩いた。建物が濫立しどこまでも空が狭い。駅と駅の感覚が近いので、数駅ぐらい歩いてしまえるのが楽しい。大学に行って、街で遊んで、夜は散歩してから木造アパート2階に帰る。同じ界隈に上京してきた学生がみんな住んでいて、早速酒を飲み交わして、先輩に流行を教わって、いらない雑誌を譲ってもらった。中古CDとレンタルCDをむさぼるように聴き漁った。東京は明るく雑然として騒がしく、俺は地元の発音を失い、高校の時に都合よく弾かされていたコピーバンドなんてすっかり記憶の隅に追いやってしまう。そうかといってサークルにのめり込んでいったかというとそんなこともなく、4月に無理やりチケットを買わされた先輩とOBらのライヴは、形容しがたく強くて形のない何らかの決意を呑ませるには十分だった。ライヴハウスバージンが最低だったことは今でも少し根に持っている。
 踏み越えてはいけない一線は、例えば駅舎の白線だったり、吐くまで飲むということ、身内受けと停滞、身体をわざと壊すこと。生きていくにはどっかが冴えてなければならない。酔ってはいけない。甘い方に流されてはいけない。
 なんて言っても10代の頃から俺は夢想家で、高層マンションの窓の連なりや路地裏の天窓みたいな狭い空や、街の中にぽっかり空いた更地みたいな狭い駐車場にうっとり見とれているうちにバイクに轢かれそうになったこともあった。
 お話はそんなところから始まる。


あげぱん
多摩美文芸部OB会誌


2015.11.01 発行
B6版 220ページ
8名+ゲスト1名

twitter @tau_ob
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2015.11.01 27000字
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1年後の8月某日。故郷「平らな町」に遊びに行った彼らは、白黒猫のユキちゃんと過去の友達、そして自分たち自身を飼いならす怪物に出会う。



She Sells Sea Shells by the Seashore

2013.05.05 発行
A6変形 16ページ 200円
全頁トレーシングペーパー製

その後の「彼」が出会った少女は、光に褪せたように薄い色をしていた。
綴じられていないバラバラの状態のページは光に透き通るトレーシングペーパー製。
繊細な装丁の上に載せられる、繊細な少女と「僕」のお話。

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イベント・自家通販 特典

『あげぱん』『She Sells Sea Shells by the Seashore』を同時に購入頂いた方・両方お持ちだという方に、
新作掌編『smoky, small town』をお付けします。

※『She Sells〜』の追加ページになります。
お手持ちのShe Sells〜に挟んでお楽しみ下さい。
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